南京事件の「日本軍の毒ガス攻撃案」の存在を日本政府が国会で言及していた

南京事件をめぐる国会質疑でもう1件。
2005年(平成17年)6月2日「参議院 外交防衛委員会(平成17年6月2日)での質疑記録」において、政府側答弁は「昭和十二年十一月三十日付けの南京攻略に関する意見送付の件、丁集団参謀長発次官あて」に言及していた。

参議院のサイトより転載。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/162/0059/16206020059013c.html

 海外では何だかホロコーストのようなことがあったというような書き方もされているわけですが、そういったような組織的な何かというのが資料として見付かりましたでしょうか、意図が。

 私ども、先ほど申し上げたところでございますが、旧軍の行為について包括的に判断をするという立場にないわけでございますが、まあこの辺りの資料を検索いたしますと、例えば、昭和十二年十一月三十日付けの南京攻略に関する意見送付の件、丁集団参謀長発次官あてとか、中支派遣軍司令部南京移駐の件、伊集団参謀長発次官あての電報とかいったようなものもございますが、もし御要請があれば個別にお示しすることは可能でございます。

これに対し山谷氏は話題を変えたため、この「この辺りの資料」についての議論はここで終わっているが、「昭和十二年十一月三十日付けの南京攻略に関する意見送付の件、丁集団参謀長発次官あて」、つまり第十軍参謀部が作成した作戦案とはどういう内容か。

同案は第一案と第二案に分かれている。(以下、藤原彰「南京の日本軍」より転載)第一案は、追撃の態勢のまま一挙に南京を急遽急襲奪取するというもの、第二案は急襲が成功しなかった場合のもので、つぎのように述べている。
(太字は青狐による)

南京ヲ急襲ニヨリ奪取シ得エザル場合ノ攻略案

此ノ場合ニ於イテモ正攻法ノ要領ニヨリ力攻スルコトヲ避ケ左記ノ要領ニ依リ攻略ス
急襲案ト同一要領ニヨリ先ズ南京ニ急追シテ包囲態勢ヲ完了シ主トシテ南京市街ニ対シ徹底的ニ空爆特ニ「イペリット」及焼夷弾ヲ以テスル爆撃ヲ約一週間連続的ニ実行シ南京市街ヲ廃墟タラシム
(中略)
本攻撃ニ於イテハ徹底的ニ毒瓦斯ヲ使用スルコト極メテ肝要ニシテ此際毒瓦斯使用ヲ躊躇シテ再ビ上海戦ノ如キ多大ノ犠牲ヲ払フ如キハ忍ビ得ザルトコロナリ


山谷議員の側からみれば、これは「やぶ蛇」な質問だったと思う。この質疑のあと山谷氏は、同史料を自分の目で読んだだろうか。


なお、同文書は秦郁彦南京事件」(中公新書)でも紹介されている。


ところで「現代歴史学南京事件」所収の新史料がもう一つありますが、また忙しくなるので来週になるかもしれません。