百人斬り裁判の判決に憤る前に、まず裁判の論点を知ったほうが


南京事件関連の裁判がいくつか行われているなか、「百人斬り裁判」の高裁判決があった。
これに対し、例えばこのブログの人は
http://blog.livedoor.jp/keroro_pekopon21/archives/50467759.html?1148569501

高裁…こんな馬鹿げた判決を覆してください…。

と述べているのだが、そもそも裁判の論点を理解したうえで「馬鹿げた判決」と評価を下しているのか、大いに疑問である。
いちおう以下のコメントを入れておいた。

そもそもこの裁判、原告に証拠や証人を求めていて、原告が揃えたにもかかわらず棄却って何?

少し疑問なのですが、ケロロさんはこの裁判の論点を理解されているのですか?
論点は「報道が事実か否か」ではありません。論点は東京日日の記事が「野田・向井本人のホラ話を情報源とする」のか、それとも「浅海記者の創作」なのか、ですよ。
野田・向井本人のホラ話に基づく場合は「名誉毀損」は成立しません。
そして原告側は件の記事が「記者の創作」である証拠を提示できなかったから棄却された、それだけのことです。

当時を知る毎日新聞のカメラマンが証言したのに棄却って何?

これも疑問なのですが、ケロロさんは佐藤カメラマンの証言の内容を理解されていますか?佐藤カメラマンの証言は明らかに原告に不利となるものでしたが…

当時『百人斬り』と報道される競争をした事実は否定できず、記事は虚偽とは言えない

記者本人が捏造と認めてますよ。

さらに疑問ですが、ケロロさんは第一審で証拠として出された望月五三郎手記の内容をご存知ですか? 原告側はこの望月手記の内容を否定することができなかったわけですから、裁判官が「競争をした」事実を「否定できず」と判断したのはしごく当然だと思いますが…

最高裁…こんな馬鹿げた判決を覆してください…。

第二審の控訴理由書において原告側は「件の記事が野田・向井自身の語った話に基づくものではない」証拠を提示できませんでした。その結果名誉毀損罪が成立しなかったわけで、「馬鹿げた判決」だとは思えませんが…むしろ原告側が、今回の訴訟が本気で勝てると思っていたのなら、それはちょっと法律音痴にすぎるのではと思います(特に弁護団に対して)。


私が思うに、この訴訟は、稲田弁護士ら弁護団が、(法律に詳しいわけではない)野田・向井両氏の遺族を焚き付けて、客観的に勝ち目のない訴訟を起こした(起こさせた)、一種の「訴訟ショー」なのではないかと思います。結果として、『大阪毎日新聞 鹿児島沖縄版』とか、望月手記とか、野田・向井両氏の遺族にとっては一層不利な史料が発掘されてしまったわけで、野田・向井両氏の遺族にとっては「やらないほうがまし」な訴訟ではないかと思いますが…