博物館問題? 何だよそれ

藤岡信勝氏が、博物館を新たなターゲットとし始めたようだ。

産経新聞記事より。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110301/art11030103040001-n1.htm

政治学者、ベネディクト・アンダーソン氏は、近代国民国家を「想像の共同体」であるとし、その形成に貢献する装置の一つとして博物館をあげた。戦後独立した東南アジア諸国で博物館が増殖していることは、国民国家が形成途上であることを意味する。

 中国では、日本が累積数兆円にも及ぶ対中ODAをせっせと貢いでいるさなかの1990年代、江沢民国家主席が号令を発して全国300カ所の反日博物館をつくり、「愛国教育基地」と称した。その内容は反日のお化け屋敷で、それを利用した反日思想教育によって、抗日戦争に勝利したのは共産党の功績であるというフィクションを国民に信じ込ませ、天安門事件以来揺らいだ共産党政権の正統性を担保しようとした。

 ところが、日本では、国民の税金でつくった博物館で、国民を分断し、国民国家を解体する愚挙が行われている。博物館問題は教科書問題と並んで、国家の存立にかかわるテーマなのである。

 千葉県佐倉市にある国立歴史民俗博物館(略称・歴博)。年間予算21億円の研究機関である。その歴博に「現代」をカバーする第6展示室が開設されたのは、昨年3月のことだった。中に、沖縄戦集団自決の展示があり、〈犠牲者のなかには戦闘ばかりでなく、「集団自決」に追い込まれた人々もいた〉と説明されていた。

 ≪歴博の不可解な展示見直し≫

 だが、奇怪なことに、博物館は展示のオープン前後に盛んに記者会見し、展示責任者の安田常雄副館長は、集団自決の展示見直しを口にした。呼応するかのように沖縄左翼が例の抗議活動を行い、今年1月5日、展示はリニューアル・オープンして、説明文は、次のような長文に変更された。

 〈沖縄戦の犠牲者の中には、戦闘ばかりでなく、「集団自決」による死者が含まれていた。米軍の上陸後、住民たちはガマ(自然洞窟)などに避難した。そして投降を促す米軍からの呼びかけを前に、「集団自決」をはかった人々が数多くいた。その背景には、米軍に対する住民の恐怖心のほか、日本軍により軍民一体化が推し進められるなかで、米軍に投降すべきでないとの観念が一般にも浸透したこと、そして手りゅう弾の配布に示される軍人の指示など、住民の意思決定を左右する沖縄戦特有のさまざまな要因があった。〉

ところで、冒頭に「想像の共同体」をもってきているが、これって自分の首を絞めているように思うのですが。
「国家の存立」に関わるといって危機感を煽っても、それってつまり「想像の共同体の存亡の危機」でしかない、ということを同じ文章の中でにじませてしまっているわけで、

さて本論のほうだが、特に目新しいものはない。

≪印象付けられた手榴弾配布≫

 これは重大な改悪である。新しい説明文は、「軍人が手榴(しゅりゅう)弾を配布して住民に集団自決するように指示した」と読める。軍人が「さあ、ここで自決しなさい」と言って、住民に手榴弾を配っている場面がイメージとして浮かぶ。だが、そのような事実はない。

 この度、変更された展示の文章には、用語上のトリックが2つ用いられている。1つは、「軍人」という言葉を使い、軍の正規の命令と区別することで、歴博は「軍命令説」はとっていないと弁明できるようにした点である。

 しかし、「軍」と「軍人」を頭の中で分けた上で展示文を読む参観者はいない。参観者は、「軍人が指示した」という文意から、必然的に「軍が指示した」と読むのである。歴博はそれを見越して、用語を使ったと思われる。

 もう1つは、「指示」という新しい言葉を使ったことである。館側の説明によれば、「関与」は幅の広い概念だから、使用を避けたということであり、それは一つの見識であると評価できる。

 ≪文科省認定の関与という魔語≫

 平成19年に問題となった高校歴史教科書の検定では、日本軍による「命令」や「強制」は根拠がないとして否定された。しかし、軍の「関与」はあったと文部科学省が積極的に認めたことにより、再検定の結果、かえって教科書の反軍的記述が大増殖したのである。文科相の国会答弁を引き出したのは、現首相の菅直人民主党代表その人だった。「関与」は教科書を劣化させた魔語であった。

 だが、「指示」ならよいかというと、もっとよくないのである。「指示」は「命令」より軽いが、「命令」よりさらに具体的・個別的な行為を示す言葉である。

 しかも、展示文は集団自決に至った要因を列挙する際に、「手りゅう弾の配布」を最後に置き、それこそが集団自決の最も決定的要因であったかのように読者が印象付けられる、修辞的効果を持たせている。誤った事実認識と悪逆非道な日本軍イメージの定着を狙ってつくられた苦心の作文であり、事実からかけ離れている。

 座間味島の梅澤隊長は「自決するな」と住民を説得したし、渡嘉敷島の赤松隊長は住民が自決に及んだことを知ると「何という早まったことをしてくれたのか」と嘆き悲しんだ。日本軍将兵は一貫して住民が無事に生き残るように願い励ましていたのである。

 筆者が会長を務める「新しい歴史教科書をつくる会」が歴博を現地調査した結果、沖縄集団自決にとどまらず、近現代史全般にわたり反日自虐史観の偏向展示に貫かれていることが分かった。看過できない重大問題である。(ふじおか のぶかつ)