派遣村への誤解や無知の頻出と、その背景(2)

派遣村の撤収に行ってきました(励ましの言葉ありがとうございます)。
肉体的にはヘロヘロしています。


まず、ブクマコメントで気になったコメント。
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/bluefox014/20090105/p1

Marin_MTB
『年末年始、ハローワークが閉まっているから「派遣村」が企画されたわけだ。』ハロワが閉まっていてもネットカフェで調べるなど手段はありそうな物だけど…。そこにすら行けない人向けってことか。

cfes
ハローワークがないと働けないのかよ…。

上記の発言が「無知」というカテゴリーに入るのか、微妙です。


仮に12/31にネットで求人情報を探して、情報があったとします。
しかし。
1/5までの間、大部分の企業は年末年始は休業、もちろん面接などやらない。
ということは、ネットに求人情報があっても、1/5までに境遇が変化することなど不可能。


それに、仮に年明けの職を運良く確保できたとしましょう。では住居は?
年末年始は不動産業者が休業中。1/5までは物件を借りたくても借りられません。

だから12/31〜1/5に「派遣村」が企画されたわけです。


上記のお二人も、年末年始に企業の人事部や不動産業者は休業、という常識的事柄を知っているでしょう。
そういう知識があるのに、それが思考に反映されなかったという意味では、典型的な「脊髄反射」症候群だと思います。



しかし、国会議員(しかも政務官の地位にある者が)が、しかも国会の場で「脊髄反射」的発言をするとは、さすがに驚き。

朝日新聞の記事より。(太字は青狐による)

東京・日比谷公園の「年越し派遣村」について、「本当にまじめに働こうとしている人たちが集まっているのかという気もした」と述べた自民党坂本哲志・総務政務官(58)=衆院熊本3区=が6日、釈明会見を開き、発言を撤回、謝罪した。ただ、「地方を活性化させるために職責を全うしたい」と語り、辞任の考えはないことを強調した。


会見で坂本氏は「関係している多くの方々に不快な思いや迷惑をかけた。発言を撤回して深くおわびしたい」と頭を下げた。その上で「(集まったのが)500、600人の大人数だったので、それだけ雇用状態が深刻だとは思うが、そうではない人たちがいるのではないかと頭をよぎった。実態をよく把握しないまま発言した」と説明した。

坂本発言問題のキモは「実態をよく把握しないまま」でしょう。
そういう脊髄反射発言さんに、政務官を務めるだけの資質があるのか疑問です。



上記ブクマ氏と坂本氏に共通する現象、それは「貧困問題に関して、思考を経ずに発言してしまう症候群」といえるでしょう。思考のための情報を入手しない。既に知っている知識を参照しない。結果、脊髄反射のような発言をしてしまう。

「貧困問題」の特質があるのかもしれません。恐怖や不安や優越感や妬みなどのバイアスが働くのでしょうか。
しかし、もはや「思考」なしに語れる状況なのでしょうか。


問題はそれだけにとどまりません。思考の道具立て、が問われるように思います。
アルファブロガーでおられる池田信夫氏の、以下のような発言を読むと、「思考の道具立てが貧しい」という言葉を想起してしまいます。

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/caa6353a3bf77b62c7782d6bd09446a2
太字は青狐による

年越し派遣村」なるイベントが、与野党ポピュリズムに利用されている。民主党鳩山幹事長が代表質問で、派遣村にコメントした坂本政務官の解任を要求したのには唖然とした。日本の政治には、もっと大事な問題がたくさんあるだろう。完全失業者は250万人もいるのに、なぜ日比谷公園に集まった500人だけを特別扱いするのか。

そもそも住宅を供給するのは、企業の義務ではない。会社をやめたら寮を出るのは当たり前だ。わざとらしく日比谷公園に集まって役所に住居を斡旋させるのは筋違いで、それに応じる厚労省も不見識だ。


坂本政務官への解任要求=500人だけを特別扱い、という論理回路はまったく理解不能です。それとも単に文章が下手なのか。
それはさておいても池田氏の思考には「セーフティネット」という概念が存在しないのかも…と思わせる文章です。