レイシズムによる南京虐殺の正当化の一例


http://d.hatena.ne.jp/bluefox014/20080105/p1の続き。
原野商法」からTBが来た。
言い繕いに走っているようだが、手遅れだと思う。
南京事件日中戦争ベトナム戦争に例えること自体はそれほど間違いではないと思うが…)
http://d.hatena.ne.jp/yasudayasuhiro/20080105/p1

俺は勉強不足なのでよくわからんが、日中戦争とはベトナム戦争のようなものであると勝手にイメージしている。俺はベトナム戦争のことは何も知らない。だが『フルメタルジャケット』や『地獄の黙示録』は観た。西島大介ディエンビエンフー』も読んだ。ここにあるのものを凡庸に語るならば、それは狂気だ。

中国という異文化の中に放り込まれる。んで、無理難題を押し付けられる。ならば、行き過ぎた行為が行われることは容易に想像できるだろう?というのが「ジャンピングタイガー」の主旨だ。そして、理不尽な環境に放りこまれれば誰だって虐殺ぐらいするだろう。君だって。理不尽に殺された人間を思うのと同時に、理不尽に殺してしまった人間のことも思え。その事を想像しろ。と書いた。大変化球で。

ここでは、「異文化の中に放り込まれた」「無理難題を押し付けられた」「理不尽な環境に放り込まれた」から「誰だって虐殺もするだろう」に論旨が変容している。
つまり、「ベトナム戦争のような極限状況だったから狂気ゆえに虐殺もあったろう」論に変容している。



しかし1月4日時点の「原野商法」のyasudayasuhiroさんの主張は、そのようなものだったか。
そのような「極限状況だから虐殺もあったろう」論だったのならば、わざわざ「ジャンピングタイガー(に扮した遊園地の男)」のような邪悪な存在の話を挿入する必要はなかったはずである。
なんでジャンピングタイガーの話をわざわざ入れたの?


もういちど1月4日のyasudaさんのエントリを見てみよう。
明らかに、「こんなヤツら」だから「仕方ないよね虐殺くらい」と述べている。
では、なぜ「虐殺くらい仕方がないよね」なのか。それは、「こんなヤツら」とは、「ジャンピングタイガーの男のようなヤツら」、つまり「2007年の、盗用キャラクター(「ティガー」のパクリであるジャンピングタイガー)の着ぐるみを着た、金をせびる遊園地の男のようなヤツら」だからである。

君は「なああああああにが、ジャンピングタイガーだああ!しかも金よこせだとおおおおおおお。」と叫んで銃をぶっ放すだろう。それは極めて普通の事だ。誰だってこんなヤツが街中にいたら発作的に殺すに決まっている。

中国に行った日本人はこんなヤツラに囲まれて大変だったわけだ。だったら仕方ないよねー虐殺ぐらい。

でも中国人からすると、日本人の目にはナチュラルボーンテロリストにしか見えないジャンピングタイガー男も、一般市民に映っているわけで。「日本人は一般市民を殺した。残酷だ。」ってことになって摩擦が起きるという。ってのが事の真相ではではないか。

これはどう好意的に読んでも「ベトナム戦争のような極限状況だったから虐殺もあったろう」論ではない。「殺されてもしようがない(インモラルで強欲な)人間が虐殺されたのさ」論である。
「ジャンピングタイガーの男」は前後の文脈に関係なく、唐突に登場する。これはどうみても意識的に挿入されたものである。「殺したくなるような、殺されてもしかたがないような存在」のサンプルとして。


1/4のyasudaさんの発言の問題は言うまでもなく、「2007年の中国に酷いヤツがいた」ことを「1937年の南京の虐殺は、殺されてもいい人間が殺されたのさ」という論拠にする思考そのものである。レイシズムによる、過去の戦争犯罪の正当化。

読み手のリテラシーを侮らないほうがいい。今更レイシズム色を消そうと取り繕おうとしても遅い。


最後に補足しておきたいのは、たとえ「極限状況だから仕方ない」という免責の論理を用いても、限界があるということだ。掠奪、さらに強姦は、そのような論理で免責しうるものではない。

38年1月12日の陸軍局長会議での、阿南大将(人事局長)の報告。
http://d.hatena.ne.jp/bluefox014/20060718/p2

軍紀風紀の現状は皇軍の一大汚点なり。強姦、掠奪たえず、現に厳重に取り締まりに努力しつつあるも部下の掌握不十分、身教育補充兵等に問題なおたえず。