なぜ、南京において大規模な虐殺暴行事件が起きたか(メモ)

少しリフレッシュ休暇していました(ブログ界から)。
昨日某ディスクユニオン浅井健一の新譜を試聴して少し元気回復、しかし試聴で大満足して買わず(笑)に店を出てしまった(笑)。で、買ったのが600円で買った中古のキリング・ジョークKilling Joke(イギリスの変なバンド。今年のフジロックに出ていた)。

キリング・ジョーク(紙ジャケット仕様)

キリング・ジョーク(紙ジャケット仕様)

さて、南京事件原因論について、某所で発表したレジュメ(正確には、レジュメの付記)の内容を転載。
考察としてはまだまだ不完全なのだが、各々が「事件の原因」に関して考えを深める手がかりに、という意図で作成したので、あえて羅列的な書き方になっている。ご参考になれば幸いです。

なぜ、南京において大規模な虐殺暴行事件が起きたか


いくつかの要因が複合的に絡んでいる
日本軍と中国軍の双方に原因があるが、もちろん圧倒的に日本軍の側に問題がある

日本軍の問題
(暴行事件全体について)
・そもそも市街戦は、市民をまきぞえにしやすい傾向にある
・すでに侵攻途中に暴行を重ねていた兵士たちを戦場の狂気の心理をもったまま市街戦に解き放った
・そういう軍隊に「殲滅」命令を出したら…
・松井司令官は「注意」を出したが…「注意」を発しただけでは十分ではなかった
・ごく少数の憲兵しか連れていなかった
・兵士の不満の「ガス抜き」、意図的な黙認
・虐待の連鎖という側面があるのではないか
・倒錯した敵愾心 
・勝者の奢り
  参考史料 飯沼守私記

「一月二六日 晴れ (省略)
本夕本郷少佐の報告。米人経営の農具店に二十四日夜十一時頃日本兵来り、留守居を銃剣にて脅し女二名を連行強姦の上二時間程して帰れり。依って訴えに依り其強姦されたりと言う家を確かめたるところ天野中隊長及兵十数名の宿舎せる所なるを以て、其家屋内を調査せんとしたる米人二名亦入らんとし、天野は兵を武装集合せしめ逆に米人を殴打し追い出せり。其知らせに依り本郷参謀現場に至り、中隊長の部屋に入らんとしたるも容易に入れず、隣室には支那女三、四在り強いて天野の部屋に入れば女と同衾しありしものの如く、女も寝台上より出て来れりと、依りて中隊長を尋問したるに中隊長は其権限を以て交る交る女を連れ来り金を与へて兵にも姦淫せしめ居れりとのこと。依て憲兵隊長小山中佐及び第二大隊長を呼ひ明朝の出発を延期せしめ大隊長の取調に引き続き憲兵にて調ふることとせり」
「一月二十九日 正午より雪、南京は再び銀世界となる。
小山憲兵隊長来り天野中尉以下の件に就き報告、事件送致に就き軍の意向を聞く。依て中尉以下同宿の者全員を送致すへきを希望し、殿下にも報告せり。(中略)天野中尉出発を差止められ何とか穏便に取計ひをとて来りしも、男らしく処理せよと論して帰す」(後略)
「一月三十日、曇り 天野中尉以下十二名軍法会議に送致」(上海派遣軍参謀長・飯沼守少将「南京戦史資料集」P-242〜243)


・侵略者が当然抱えるであろう不安…勝手知らない都市に入ってきて、自分たち以外は全て潜在的に敵という状況
→不安を打ち消すために最も確実な方法は殺してしまうことである
・さらに、陥落させて「入城式」を行うことに固執する
→凱旋する朝香宮の安全を確保するという目的、あるいは名目で、疑わしき者はすべて殺してしまう



(捕虜殺害について)
・捕虜収容の準備なしで侵攻した日本軍
・上海戦の時点で捕虜殺害していた日本軍
・捕虜を養う食糧がないので殺してしまう
   参考史料 第十一軍司令官岡村寧次は以下のような報告を受けた

中支戦場到着後先遣の宮崎参謀、中支派遣軍特務部長原田少将、杭州機関長萩原中佐等より聴取する所に依れは従来派遣軍第一線は給養困難を名として俘虜の多くは之を殺すの悪弊あり、南京攻略戦に於て約四、五万に上る大殺戮、市民に対する掠奪、強姦多数なりしは事実なるか如し。
「現代歴史学南京事件」(笠原/吉田編著、柏書房、2006年)の12頁、「総論 現代歴史学南京事件笠原十九司、吉田裕」より引用



中国軍の問題

・撤退命令のタイミングの悪さ、意志の不統一 
・市民防護への意識の低さ
・捕虜殺害を逃れるために民服(便衣)に着替えて逃亡


ちなみに「原因論」に関しては、岩波講座「アジア太平洋戦争」第5巻「戦場の諸相」収録、揚大慶氏(ヤン・ダーチン、ジョージワシントン大準教授)の「南京残虐事件 原因論の考察」という30頁ほどの論文があって、1939年以降の「原因論に関する考察」の歴史が俯瞰されている。原因論に関心のある方は、3570円払う(または図書館に行く)だけの価値はあると思います。岩波なので*1仕入れている書店が少ないという問題がありますが。

*1:書店買い取り/返本不能なので、書店が仕入れない場合が多い