東中野氏「正論」7月号論文のここがダメ(「中央宣伝部は…否定していた」に関して)

「国際宣伝部…否定していた」

(6月6日、50%ほどアップ。残りは後日)
素人騙しのトリック+こじつけメソッド。
とりあえず素人騙しのトリックについてはhttp://d.hatena.ne.jp/bluefox014/20060506http://www11.ocn.ne.jp/~nbbk/143/prolog.html参照。



http://www11.ocn.ne.jp/~nbbk/143/prolog.htmlより引用。
すでに前著「証拠写真を検証する」で東中野氏は、「ウソがバレるから削除」説を述べているが、これに対する反論である。

14頁から15頁。
「ベイツ師の「四万人虐殺」は、事情に疎い欧米向の宣伝本 つまり、ティンパレーの『戦争とは何か』には含まれるが、その中国語版の『外人目撃中の日軍暴行』では削除されたとする。なぜなら、事情通が読むとウソがわかるからとしている。その後四度にわたって中国大陸で刊行された他の英語版の出版物からも削除しつづけた」

南京大虐殺 否定論 13のウソ』(53頁)によれば、東中野氏は『「南京虐殺」の徹底検証』のなかでも、これと似たことをしている。『チャイナ・イヤー・ブック』(『中国年鑑』)は『ノースチャイナ・デイリー・ニューズ』と同じ新聞社が発行したものである。1938年1月22日付けの『ノースチャイナ・デイリー・ニューズ』には、1万人南京虐殺の記事がのっているが、1938年2月2日の日付けの入った序文のある『チャイナ・イヤー・ブック』の1938年版には、「1937年12月13日 日本軍南京占領」とあるだけで虐殺の記述がない から虐殺はなかったという論である。これは編集の段取りから当たり前のことで、出版間際の事件など詳しく掲載されることはないのである。

東中野氏は日刊紙とイヤーブックの締め切りの差を知らない、ということだろうか。

11頁に、ティンパーリ編『戦争とは何か』の漢訳版(漢口と香港で出版された)である『外人目撃中の日軍暴行』(昭13) と、東中野氏は書いている。しかし、実際には、『外人目撃中の日軍暴行』は、イギリスで出版された『戦争とは何か』の書籍を翻訳したものではない。

評伝社版『外国人の見た日本軍の暴行』によれば、『外人目賭中日軍暴行』(『外国人の…』の中国語版)は、ティンパレー記者が、イギリスで出した『戦争とは何か(What war means : the Japanese terror in China : a documentary record / compiled and edited by H.J. Timperley)』(『外国人の…』の英語版)を訳したものではなくて、ティンパレー記者から、離中前に、原稿『What war means the Japanese Astro-cities in China (ママ*)』の複写を得て、それから訳出したものとなっている。評伝社版の日本語版は、中国語版からの訳である。

つまり、原稿のバージョンは以下の通りとなる。

・香港で刊行された『外人目賭中日軍暴行』…バージョン1
・イギリスで刊行された『戦争とは何か』 …バージョン2

ということは、考えられる可能性は、バージョン1にない「4万人殺害説」を、バージョン2で追加した、という可能性が大いに考えられる。

つまり、ベイツ師の 四万人殺害 は削除されたのではなく、初めからなかった可能性があるのである。英語版に付け加えられた可能性もあるということだ。だから、詳細を示していないがその後四度にわたって中国大陸で刊行された他の四冊の英語本に転載されたさい 載らなかった可能性もあるということだ。同じ内容でも順序を変え、少し言葉を変えるとぜんぜん違った印象を受けるものだ。もちろん東中野氏の国民党宣伝部の方針という話も、このような事実の上に「おっかぶせる」事もできないわけではないが、少なくともストレートな表現ではない。

※今回の本では、他の4冊の所収された書名が書かれているが、これもバージョン1の英訳版だとすれば「記述がない」ことも説明がつくだろう。

つまり、あった記述が「削除」されてなくなったのではなく、なかった記述が「追加」された、というだけの話なのではないだろうか、というのが※※さん(サイト主さんの名前がわかりません。msqさんでしたっけ?)の考察である。

東中野氏は、評伝社版『外国人の見た日本軍の暴行』に目を通さなかった、ということだろうか。