東中野氏「正論」7月号論文のここがダメ(「工作3」に関して)

(6月5日、文章upしました)

工作3 世界に「敵の暴行」を発信させる

ここのポイントは2つ。
南京事件の第一報であったダーディンやスティールのニュースソースが、実は「ベイツレポート」であった(次節で「ベイツは中華民国顧問である」という記述がある)
アメリカの新聞にダーディンやスティールの記事が掲載されたのに、アメリカ政府は日本を非難しなかった


1点めは「ゆう」さんが「南京事件 小さな資料集」で指摘しているとおりで、原文を読む事のない人間を対象にした「素人だまし」です。
http://www.geocities.jp/yu77799/bates2.html

東中野氏はどうやら、ベイツは「中華民国顧問」だった。ダーディン、スティールは、「中華民国顧問」たるベイツが作成したメモをもとに、記事を執筆した。従って、「記事」は実像を正しく伝えたものではなかった、というストーリーを読者に印象づけたいようです。

しかし既に触れた通り、 「ベイツ=中華民国顧問」説は、根拠の薄いものです。
http://www.geocities.jp/yu77799/bates1.html

また、ダーディン、スティールが「ベイツレポート」のみを頼りに記事を書いたかのような書き方も、彼ら記者の熱心な取材活動を無視した暴論であると言わざるをえません。

 だいたい、ダーディンらの長大な「記事」とコンパクトな「ベイツメモ」とでは「情報量」のケタが違います。ダーディンらが「メモ」のみを「ソース」にあれだけの分量の記事を書くことなど、そもそも不可能でしょう。

論より証拠、ベイツレポート、ダーディンの記事、スティールの記事を読み比べると一目瞭然です。

ベイツレポートhttp://www.geocities.jp/yu77799/siryoushuu/bates1.html
ダーディンの記事http://www.geocities.jp/yu77799/durdin.html
ティールの記事http://www.geocities.jp/yu77799/steele.html



そのうえで、3人の文章に共通する内容があるのは事実ですが、これもゆうさんが3つの文章を読み比べてみた結果は…
http://www.geocities.jp/yu77799/bates2.html

実際問題として、東中野氏が「明らかに酷似している」とした部分は、何のことはない、当時南京にいた外国人たちの共通の認識であるに過ぎませんでした。 以下、見ていきましょう。

「以下、見ていきましょう」以下の内容は、http://www.geocities.jp/yu77799/bates2.htmlの後半部分をご覧ください。もはや、説明は不要でしょう。


さて2点目の「アメリカ政府の反応」についてですが、これは当時の国際政治・外交状況をきちんと把握しないと発言できないので保留します。ただ、1938年の国際情勢って、ヨーロッパ大戦勃発寸前という状況ですよね。南京事件が起こった37年12月にはイタリアの国際連盟脱退、38年1月にはフランス人民戦線内閣の危機、3月にナチス・ドイツオーストリア併合…38年時点でアメリカにとって対中、対日が優先順位の上位になかったのは事実でしょう。
調べてわかったことがあれば追補を書くことにします。