南京事件は、日本軍の「自国兵士への虐待」から始まった

さて、南京侵攻の途上のことについて。
第十軍の憲兵、上砂少将の発言については何度も引用してきたが、これはある価値基準からすれば「日本軍による日本軍兵士による虐待」だと言って過言ではないように思う。

とりあえず某所での拙投稿を引用して、問題提起とします。

第十軍の憲兵、上砂少将はこう述べています。

「第一線部隊の携行糧秣は瞬く間に無くなり、補給は続かず、全く「糧食を敵による」戦法に出なけれはならない有様であって、勢い徴発によったのである。
然しこの徴発たるや、徴発令に基く正当な徴発は、現地官民共に四散しているため実行不可能で、自然無断徴用の形となり、色々の弊害を伴った。この情勢を見ていた軍経理部長は、「こんな無茶な作戦計画があるものか、こんな計画では到底経理部長としては補給担当の責任は持てないから、離任して内地へ帰えらして貰う」といきりたった程で、参謀長田辺盛武少将の口添えでその場はおさまったが…」


http://d.hatena.ne.jp/bluefox014/20050430

兵士に食糧を与えない。立派な虐待です。兵士はどうするか。中国の民間人(農民)から奪うしかありません。10万人の兵士が食糧を奪う。大変な犯罪ですが、これは個々の兵士の責任の問題ではない。

加えて南京戦に送り込まれた兵士の大半は、上海事変の戦闘に従軍した兵士です。激戦を経て日本に帰れると思ったのに、次の戦闘に送り込まれる。そして食糧も与えられない。気が荒れて当然です。

こういう虐待を自軍兵士にしている以上、個々の兵士の不法行為は(たとえどんな規模でも)劣悪な食糧状況、精神状況に追い込んだ日本軍にも「少なからぬ」責任があると、私は考えます。

※なお、総司令官の松井石根大将は、南京戦後

上海附近作戦の経過に鑑み南京攻略戦開始に当り…我軍の南京入城に当り幾多我軍の暴行奪掠事件を惹起し、皇軍の威徳を傷くること尠少ならさるに至れるや。
是思ふに
一、上海上陸以来の悪戦苦闘か著く我将兵の敵愾心を強烈ならしめたること。
二、急劇迅速なる追撃戦に当り、我軍の給養其他に於ける補給の不完全なりしこと。
等に起因するも亦予始め各部隊長の監督到らさりし責を免る能す

と、「幾多我軍の暴行奪掠事件」の原因の一つに「我軍の給養其他に於ける補給の不完全」があったとはっきり述べている。