そもそも「死罪」に該当するような戦時犯罪なのか?

http://d.hatena.ne.jp/bluefox014/20110105の、便衣兵殺害に関する議論について補足。

南京事件において、便衣兵殺害=合法殺害論に立つ人の主張に対して常々疑問に思っていることは、
・侵略された側の正規兵が
・軍服を脱いで
・逃亡/潜伏した
ことが、死罪に値する戦時犯罪なのか? という疑問である。

仮に戦時犯罪に該当するとしたら、ハーグ陸戦条規の第23条違反になると思われるが、

【第二三条】(禁止事項)
ろ 敵国又は敵軍に属する者を背信の行為を以て殺傷すること
http://www1.umn.edu/humanrts/japanese/J1907c.htm

ここで禁止事項となっているのは「背信の行為を以て殺傷すること」である。
「民服に着替えて逃亡/潜伏したこと」=「背信の行為を以て殺傷すること」と同一化することは、どうみても無理がある。

つまり、実際にゲリラ戦を行わない限り、23条に抵触するとは考えられない。


また、ハーグ陸戦条規の第1条違反という主張をあちこちで目にするが、そもそも第1条は「民兵義勇兵」についての規定である。

【第一条】(民兵義勇兵
戦争の法規及権利義務は、単に之を軍に適用するのみならす、左の条件を具備する民兵義勇兵団にも亦之を適用す。
一.部下の為に責任を負ふ者其の頭に在ること
二.遠方より認識し得へき固著の特殊徽章を有すること
三.公然兵器を携帯すること
四.其の動作に付戦争の法規慣例を遵守すること

つまり、「第一項〜第四項の条件」を具備する民兵義勇兵団にも「戦争の法規及権利義務」を適用する、という条項であり、正規兵に対しては、何ら規定を示していない。
この条文を根拠に、正規兵に対して死罪を加えることは、到底無理があるだろう。


以上の点だけでも「死罪に値する戦時犯罪」説に説得力はないと私は考えるが、さらにいえば、侵略された側が劣勢状況で、軍服を脱いで逃亡/潜伏することのどこが「死罪に値する」行為なのか、さっぱり理解できない。


想像してみよう。
1945年の沖縄戦で、日本軍兵士が軍服を脱いで逃亡/潜伏したら「死罪に値する」行為だったのか? 
もし本土決戦に至り、日本軍兵士が軍服を脱いで逃亡/潜伏したら「死罪に値する」行為だったのか?


そもそも、もっとも不法行為を問われる人間は誰か? 侵略し、そこを占領している人間である。
まず不法行為を止めるべき人間は誰か? 侵略者である。一刻も早く、その場を立ち去るべきなのだ。


侵略された側に立って物事を考えてみれば、「侵略した側」の主張のグロテスクさがわかる(はずだ)。