ネット上で偽造された史料が「南京事件ありえなかった」説の土壌に

前回確認したのが、apemanさんやジムシイさんが相手している否定派の人たちが、歴史学者の書いた概説書を全く読んでなさそう、ということだった。
彼ら否定派の人たちは日中戦争においても「日本軍の軍紀規律」は比較的厳正だったと認識している。その根拠の一つに以下のサイトがある。

フランスの国際法学者フォーシーユ
日中戦争で日本軍は、敵が国際法を無視したにも拘らず自らはこれを守り、日本軍人であることに誇りを持っていた。中国兵は卑怯にして残虐極まりない軍隊で、例えば中国軍の捕虜になると、四肢を斬り分けられ、生きながらに火炙(あぶ)りにされたり、磔(はりつけ)にされたりしたのである。更に日本兵の屍に対しても、酸鼻を極めた蛮行を行っている。即ち死者の首を切り落とし面皮を剥ぎとり、或は男根を切り落し、胸部を切り開いて石を詰め込み、首は両耳を穿って紐や針金を通し、さながら魚を串刺しにしたように口から喉に紐を通して持ち運びする等々、それが中国軍の戦争様式であり、日本軍には絶対に見ることのできない支那の戦争文化である」

フランス フィガロ紙の従軍記者カレスコート・イリュスト、ラシオン紙の記者ラロ、
両氏の『日本軍戦闘観戦記』
「日本軍隊は世界に対して誇るに足る名誉を有する。吾らは日本軍の如き慈愛心の富める軍隊を、この地球上広大なりといえども他に発見し得るか怪しむものなり」
「ひるがえって中国軍を見よ。日本兵のひとたび彼らの手に落つるや、あらゆる残虐の刑罰をもってこれを苦しむるなり。その残虐非情なる行為は、正に野蛮人にあらざれば為し得ざるものなり。然るに日本軍は、これあるにもかかわらず、暴に報ゆるに徳をもってす。さすがに東洋の君主国に愧じずというべし。」

http://www.senyu-ren.jp/SEN-YU/00104.HTM

Posted by ADON-K at 2006年07月26日 01:34

ところが、上の「フォーシーユの文」や『日本軍戦闘観戦記』は、日中戦争より42年も前の日清戦争について書かれた記述だった。
前者は有賀長雄「日清戦役国際法論」(1896年、陸軍大学校)の序文。(ポール・フォーシルと記されている。都立中央図書館にて確認)

日本は独り内部の法制に於いて世界最文明国の班列に達したるに非ず。国際法の範囲に於いても亦同然たり。経験は日本政府が能く其の採択する所の文明の原則を実行するに堪うるを表示せり。すなわち日本は清国に対する一八九四年の戦争に於いてこの事を証明したり。この戦役に於いて日本は敵の万国公法を無視せしに拘らず自ら之を尊敬したり。


もうひとつも日清戦争についての記述だった。

http://touarenmeilv.ld.infoseek.co.jp/from1to2wlaw.htm
フランスのフィガロ紙従軍記者とイリュストラシオン紙従軍記者は、「余等は日本帝国の如き慈愛心に富める民あるを、この広大な地球上に発見し得るかを怪しむなり」と驚嘆し、 

「ひるがえって清軍を見よ。日本軍卒の一度、彼等の手に落つや、あらゆる残虐の刑罰をもって、これを苦しむるにあらずや。或いは手足を断ち、或いは首を切り、睾を抜く、その無情、実に野蛮人にあらざればよくすべきの業にあらず、しかし日本はこれあるにかかわらず暴に酬ゆるに徳をもってす。流石に東洋君子国たるに愧じずと云うべし。」

日中戦争時の日本軍の軍紀規律は劣悪だった」説の根拠は日本軍の史料を根拠にしているが、これに対し「「日中戦争時の日本軍の軍紀規律は厳正だった」説の根拠は、ネット上で偽造された史料だったりするわけである。

追記するかも。