願望を根拠にした「避難希望者全員避難完了」説

このブログ主さんは南京事件の「人口論」についてグースさんの人口論に「丸投げ」されているようだが、これについては昨年apemanさんのところで、グースさんの人口論は「避難希望者全員避難完了」説において「願望」を根拠にしているにすぎない旨を指摘した。転載する。

http://homepage.mac.com/biogon_21/iblog/B1604743443/C1615791011/E20051208212401/index.html

人口20万人説とグース説について。
安全区20万人=南京市の人口20万人説は、「安全区以外は無人」説を立証しなければ成立しません。そこで 野良猫さんは当初「城外は清野作戦で無人」だと断定したのですが(メモ59)、宝塔橋街の史料によってこの 説は破綻します(同コメント欄)。そこで彼はグースさんの説に「丸投げ」します。…以上が前置き。


で、グースさんの「安全区以外無人」説は「避難希望者30万人」説、「避難希望者の避難完了」説で構成され ているわけですが、「避難希望者の避難完了」説の論拠は(アメリカ大使館報告に「警察官が避難完了と思われ る記述がある」「避難民の記述がない」これだけなんですね。

で、ところが、元史料のアメリカ大使館報告を見ると…

(引用始め)
受信:1937年12月11日午後8時9分
ワシントン国務長官
第1036号 12月11日午後6時
3、今日の午後、市外との陸上電話の回線が破壊された。電気と水道の業務は機能するのを止めていると報告さ れている。
今日の午後、パナイ号が移動する前に我々は、警察官が川岸で渡江して避難する準備をしているのを見た。その 後、数百人の警察官が同じ目的で下関区へなだれ込むのを目撃したから、もはや市内に警察官はいないのではな いかと思われる。
(引用終わり)


たったこれだけの記述しかないのですが、この史料に対するグースさんの解釈が

>警察官が渡河を企図している描写はありますが、渡河を待つ避難民の記述がないということから、すでに避難 民の渡河は終了していたと考えてよいと思われます。

この短い報告に記述がないから「避難民の渡河が終了していた」?
報告からは、12月11日(陥落の前々日)に警察官が対岸への避難を準備していた、ということしかわかりま せん。警察官の避難と民間人の避難は独立した事象ですから、この短い記述からは民間人避難の進捗状況は読み取れないはずですが、グースさんはここから「すでに避難民の渡河は終了していた」と解釈されるのです。これ こそ野良猫さんの言葉を借りれば「それは分析というよりは願望」の典型ではないかと思うのですが…

「避難完了説」はこの程度の「願望」で支えられた説なのですが、野良猫さんは「人口20万人説」を保持する ためにこの説に「丸投げ」したということですね。


補足すると、民間人の避難完了の「後に」警察官が避難を始めた、というのがそもそもグースさんの「思いこみ 」「願望」にすぎないわけで、その機序を立証する史料的根拠をグースさんは提示できていないわけです。
実際問題として、いざというとき警察官は民間人をさしおいて独自に避難してしまうことはありえるわけですし 、平気で清野作戦を実行してしまう当時の中華民国なら、なおさらその可能性は低くないでしょう。

青狐(bluefox014) | Homepage | 12.17.05 - 2:45 am | #

関係ないけど、グース説を持ち出す人は「丸投げ」する人が多い気がするなあ。