日本が日中戦争を始めたのは経済的動機だった?(2)華北分離工作と資金調達(麻薬の密輸・密売)

MacacaFuscataさんからコメントをいただく。

山中恒・山中典子『書かれなかった戦争論』では、蒋介石が行った法幣改革の影響が大きいとしていますね。 (2006/01/12 20:26)

これは加藤陽子氏が指摘したものとは別の経済的要因と言えるようだ。
法幣改革に対する日本の対応を調べてみると、
http://www.shigaku.or.jp/World/silver2.htm

日本政府は中国の幣制改革の断行に対して、直ちに強硬な反対声明をだし、「北支の現銀輸送防止に実力発動をも辞せず」と積極的に幣制改革を妨害する方針をとると同時に、「今ヤ北支那自治ナイシ分離運動ハコレガタメニサラニ拍車ヲカケラレ、帝国ノ抱懐スル北支工作ヲ断行スルニ絶好ニシテマタトナキ機会ヲ現出セリ」(外務省『日本外交年表並重要文書』原書房)として北支分離工作に拍車をかけることになったのである。北支分離工作とは華北を国民党の支配から切り離して、そこに日本の傀儡(かいらい)政権を樹立する工作のことであり、実際に、一一月二五日には冀東防共自治政府、同三〇日には冀察政務委員会という二つの傀儡(かいらい)政権をつくりあげた。

この辺はもう少し勉強しなければいけないですね。
この「華北分離工作」で作られた通州の「冀東防共自治政府」について江口圭一「十五年戦争研究史論」は以下のように記す。 

通州は冀東政権の本拠地であり、華北併呑の舌端であるとともに、アヘン・麻薬の密造・密輸による「中国毒化」の大拠点であった。ヘロイン製造にあたった山内三郎は「冀東地区から、ヘロインを中心とする種々の麻薬が、奔流のように北支那五省に流れ出していった」と記し、中国の作家林語堂は「偽冀東政権は日本人や朝鮮人の密輸業者、麻薬業者、浪人などにとって天国であった」と書いた。

「中国毒化」とあるが、要は蒋介石政権の中国統一を妨害する「工作資金」を調達するために、アヘン・麻薬の密造・密輸が行われた、ということであろう。
このあたりの過程を読んでいると、なんだかVシネマのやくざ映画を観ているような気分になってきた。(笑)と書きそうになったが、しかし笑い事ではないな。

以下追加または次エントリに続く予定。