ナショナリズムって、こんな大仰なお話でしたっけ? (1)
13日エントリで、uumin3さんの「ナショナリズム 樹形図モデルと河川図モデル」という記事を紹介したが、同じuumin3さんが新しいエントリを出された。
その前のやりとりから、uumin3さんの発言に対しては違和感を感じ続けていたのだが、今回の文章は正直、どう受けとめたらいいのか迷っている。
まずuumin3さんは、ジョージ・W・ブッシュの2001年1月20日大統領就任演説を引用した上でこう述べる。
もちろんリベラルな方々に評判の悪い?ブッシュ大統領ですから「嘘だ!」とかいう声も聞こえてきそうですが(苦笑)私がその時思ったのはこの演説の当否とかではなく、大統領就任式に国民に伝えるべきとして考えられたそのメッセージでした。
それは「あなたの人生にとってアメリカ合衆国で生れたということに意味があるんだよ」というものです。アメリカがその国民に、公式にそういうメッセージを呼びかけていることにちょっとびっくりしたのです。
読んでいるこちらがびっくりした。というのは、引用されているブッシュ演説の内容は以下の通りだからだ。
世代を超えてアメリカを束ねるかずかずの永続的な価値。そのなかでもっとも偉大なのは、すべての人が社会の重要な一員であり、すべての人に機会が与えられており、意味のない人生というものは一つもないという信念である。われわれ一人ひとりが日々の生活を通じ、また法律を通じて、この理想を実現すべく求められている。時にその努力は妨げられ、時にその歩みは遅々たるものであるとしても、われわれはこの道からいささかも外れてはならない。
この演説をどう読めば「あなたの人生にとってアメリカ合衆国で生れたということに意味がある」というメッセージを見いだせるのか。
「意味のない人生というものは一つもない」というブッシュの言葉が、どうやって「あなたの人生にとってアメリカ合衆国で生れたということに意味があるんだよ」という意味に転ずるのか、あるいは私が文脈を読めていないのかもしれないが、おそらくuumnさんの発言とブッシュの発言は別々のものだと思う。
というわけで、ブッシュの発言は無視して、uuminさんは何を言おうとしているのか。
一部抜粋(太字は青狐による)
そこに生まれたこと(そしてそこで育つこと)というのは言わば運命的なものです。それをどう捉えるかは各自に任されていると言ってよいでしょうが、その国で生まれ育つということを必要以上に軽んじることはできないと思います。
誰も生れたくて生れてきたんじゃない…というのは一面の真実ですが、生れてきた以上人はそこにできるだけ意味を探そうとします。その意味の一翼を担うものに、そこで生まれてきたことというのも考えてよいはずです。ならばその運命は愛したいと思ってしかるべきでは?
国レベルの「そこに生まれたこと」のみを重視する必要もありませんが、そのレベルでそれを考えてもいいはずです。そしてできればそれはニュートラルに語られるようになって欲しいものですし、運命愛がそのレベルに向かうのも私は特に不自然には思えないのです。
またナショナリズムは広い意味を持ち、「国家主義」「国民主義」そして「民族主義」などと訳され、確かに一面でレイシズムと通じるような側面も持っているでしょう。それは否定しません。ただやはりナショナリズム=レイシズムではないわけです。
ナショナリズムの負の側面を否定するために、それを全面的に悪いものと考えるのはおかしいです。そしてそういう観点を強いられていると、素直に自分の運命が愛せなくなってしまいます。これはちょっと苦しいことです。さらにその国で生まれたことを負の遺産>呪いみたいに言われては、立つ瀬が無くなります。「日本人は謝れ」みたいに言われるというのはそういうことです。
ナショナリズムに関わる議論で、これだけ「意味」、「運命」、「愛」という言葉が頻出する文章を読むのは初めてかもしれない。ナショナリズムって、こんな大仰なお話でしたっけ。
それにところどころ出てくる断定や「べき」論が、なんか妙だ。
とりあえず最初の質問。
# bluefox014 『>生れてきた以上人はそこにできるだけ意味を探そうとします。
探そうとする人もいる、ということですよね。「人は」と一絡げに語ることには、違和感を感じます。
>その意味の一翼を担うものに、そこで生まれてきたことというのも考えてよいはずです。
同時に、考えなくてもよいはずですよね。
>ならばその運命は愛したいと思ってしかるべきでは?
それは自分のいかなる「運命」か認知なり了解した人に限定した話ですよね。人は自らの運命なるものを認知できるとは限らないし、自分の運命なるものを間違って認知したり了解したりすることもあるだろうとと私は思っています。ですから、自分の運命を認知・了解できた人の心情は、正直わからないですね。
この質問へのレスを通じて、少し見えてきたことがあるのだが、それについては(2)以降で述べる予定。