「この世界のあちこちのわたしへ」
- 作者: こうの史代
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2008/01/12
- メディア: コミック
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『夕凪の街、桜の国』に続くこうの史代の作品(現在、週刊「漫画アクション」にて月1回連載中)。
画像入りの紹介サイトはhttp://webaction.jp/title/15.php
「夕凪の街」は広島原爆から10年後の1955年を舞台としたものだったが、今回の作品は、昭和19年の呉市を舞台としている。今回の(上)は第11話までと、前史となる3話(舞台は広島市江波)を掲載。
「漫画アクション」サイトの作品紹介より。
戦中の広島、浦野すずは軍都、呉へと嫁ぐ……。新しい街、新しい人、新しい人生。築き築かれ、壊し壊され、それでも重なっていくいとおしき日々……。『夕凪の街 桜の国』で戦争の悲しみをまったく新しい形で現代に提示したこうの史代が描く新境地!
8ページごとのエピソードの積み重ね。どのエピソードにもユーモアが満ちている。そのいっぽう、戦争による日常の変化、当時の女性が強いられた境遇も丹念に描かれる。
そして(ここがこうの史代氏の力量だと思われるのだが)浦野すずという人間も、その他の人物も、庶民であるが「庶民」という抽象性に還元できない、唯一性を持った人間として描かれている。
物語はゆっくり流れる。
昭和20年7月1日の夜に向かって。
1945年7月1日深夜、呉市大空襲。
エントリ表題は中扉所収の、著者の言葉。
この作品は「この世界の片隅」の物語であり、同時に「この世界のあちこち」の物語である。
そう言い切れるだけの普遍性を、この作品は持ち得ていると私は思う。