「論座」と「世界」最新号の南京事件記事


今月13日は南京事件発生から70周年になりますので、いくつかの雑誌で南京事件特集が組まれています。
とりあえず、「論座」「世界」の記事の概要をお知らせします。


朝日新聞社論座」2008年1月号(発売中)
特集 歴史学と現実政治

「世界史の中の南京事件」 
(対談:笠原十九司都留文科大学教授、楊大慶=ジョージ・ワシントン大学准教授)

岩波書店「世界」2008年1月号(本日12/8発売)
特 集2 南京事件70年

【悲劇の記憶】

実証と認識――南京大虐殺の史実を共有するために
張憲文 (南京大学)


その発生から70年を経て、なお南京事件の記憶は中国において深刻でありつづけている。日本の歴史修正主義者から加えられる〈第二の加害〉が、その深刻さを感情的な憤激へと転化させる。南京大虐殺とはどのような事件であったのか。どのような資料によってその状況は明らかにされてきたのか。浅薄な〈否定論〉に対して、中国現代史の碩学が具体的資料を挙げながらその全体像を概括する。
zhang xianwen 歴史家。1934年生まれ。南京大学教授。中国現代史学会名誉会長、南京歴史学会会長、南京大虐殺史研究会副会長などを歴任。著書に『中華民国史綱』『中国現代史史料』『中国抗日戦争史』『中華民国史』など多数。


【日中交流のために】

負の遺産を克服するために――中国における南京事件研究の到達と課題
張連紅 (南京師範大学)


かつて戦後長いあいだにわたって、中国において南京事件を対象とする研究は存在しなかった。中国における南京事件研究は、日本における歴史修正主義の台頭とともに展開する。だが、近年、中国における南京事件研究は、対抗的ナショナリズムの枠内から脱皮しつつある。とりわけここ10年、実証的な研究が飛躍的に進んでいる。その流れを代表する南京事件研究の気鋭が、中国における南京事件研究の現在を報告する。
Zhang lian hong 歴史家。1966年生まれ。南京師範大学教授。南京大虐殺研究センター主任。

【否定派批判】

南京事件論争の過去と現在
笠原十九司 (都留文科大学)


日本における南京事件研究は、そのまま〈否定派〉との論争の歴史でもあった。論争の最前線に立ち続けている笠原氏による、「南京事件学術交流シンポジウム」における報告。否定論の近年の動向や、否定論が跋扈する状況を許している「傍観者」の問題を考察する。
かさはら・とくし 歴史家。1944年生まれ。都留文科大学教授。著書に『南京事件』(岩波新書)『南京難民区の百日』(岩波書店) など多数。


【インタビュー】

政治家と歴史認識――日中戦争南京事件70年に思う
野中広務 (政治家)


歴史修正主義に近づく保守系の若い国会議員たち。「南京大虐殺はん捏造だった」「「慰安婦」は自発的な意思に基づくものだった」―― 被害者の傷口に塩を塗り、アジア諸国との関係を損ねる言説が横行している。元官房長官自民党幹事長をつとめた野中氏が、自らの戦争体験・〈南京〉体験から、戦争の痛みをないがしろにする今の政界を叱る。
のなか・ひろむ 政治家。京都府園部町議・同町長、京都府議会議員、自民党幹事長、内閣官房長官などを歴任。2005年、イラク特措法の採決を棄権し、その後、国会議員を引退。日中友好協会名誉顧問。

国際化する〈ノーモア・南京〉――南京事件70周年国際シンポジウムの意義
尾山 宏 (弁護士)


南京事件から70周年にあたる2007年、アメリカ・カナダ・イタリア・フランス・ドイツ・マレーシア・韓国・中国・日本・フィリピンの10カ国で「南京事件国際シンポ」が開催されてきている。その目的はなんなのか。ナチによるホロコーストや広島・長崎の原爆とともに、国際化する〈ノーモア・南京〉を、加害者側から提唱していくことの意味を、歴史認識・戦後補償問題に第一線でかかわりつづけてきた弁護士が報告する。
おやま・ひろし 1930年生まれ。弁護士。家永教科書訴訟や中国人戦争被害者訴訟にかかわる。南京事件70周年国際シンポジウム実行委員会代表


【座談会】

続く世代にとって〈南京〉とは何か
荒川美智代 (南京への道・史実を守る会)、齋藤一晴 (関東学院大学教員)中竹忠浩 (「心に刻む会」実行委員会)


南京事件の発生から数十年を経てから生まれた世代、それも加害国側の若い世代から、南京という重い記憶と戦後責任に取り組む運動が育ってきている。被害者・加害者の証言をどう受け止め、どう後世に伝えていこうとしているのか。1990年代、課題としての戦後責任を発見しつつあった社会的雰囲気のなかで育った世代による座談会。