映画への「レッテル貼り」に加担する櫻井よしこ氏
前エントリ*1に続いて、櫻井よしこ氏の発言について。
産経の記者ブログ経由で知ったのだが、桜井よしこさんは1月16日に「安倍政権に期待すること」と題した講演を、自民党本部で行ったという。
http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/102810/
講演全体への論評はしない。ここで問題としたいのは、やはり南京事件について(正確には映画「Nanking」について)の櫻井氏の発言である。
今年は南京事件から70周年だが、米国では南京事件があのアイリス・チャンという人が書いた、多くの根源的な間違を含んでいる本の内容に沿ったかたちで映画が製作されていく
櫻井よしこ氏は、たしか「ジャーナリスト」のはずだ。
ジャーナリスト櫻井よしこ氏は、何を根拠に、同映画が「あのアイリス・チャンという人が書いた、多くの根源的な間違いを含んでいる本の内容に沿ったかたちで制作されている」と述べているのか。
この問題については、既に昨年11月の産経報道(06年11月26日付朝刊、1面)に対し批判を加えているのだが、おさらいする。
実は、企画書からは「レイプ・オブ・南京」の内容に沿ったかたちの内容であると判断できないし、
http://d.hatena.ne.jp/bluefox014/20061126
産経の記事にも「レイプ・オブ・南京」の内容に沿ったかたちの内容であると判断するに足る合理的な根拠はない。
http://d.hatena.ne.jp/bluefox014/20061127
そして、同映画の出演俳優サニー氏も以下のように発言している。
http://blog.goo.ne.jp/bluela/e/5d183053f8f188d362da08df278f4ceb
レイプ・オブ・南京の本がベースになっているとは誰も言っていない。
同映画のサイトにも、レイプ・オブ・南京の本がベースになっているとは書かれていないし、そのように判断できるような記述は掲載されていない。
http://nankingthefilm.com/home.htm
にもかかわらず、「レイプ・オブ・南京」の内容に沿ったかたちの内容の映画という印象ばかりがばらまかれている。
これは、映画「Nanking」に対し「デマ映画」「プロパガンダ映画」というレッテルを貼って、読者に先入観を与えるの目的ではないか、と私は推察する(2006年11月時点)。
http://d.hatena.ne.jp/bluefox014/20061128
その後現実に、いくつかの雑誌では【反・映画「Nanking」】キャンペーンが行われている。
●「諸君」2007年2月号
http://www.bunshun.co.jp/mag/shokun/index.htm
──アメリカは歴史問題をどう見ているのか──
アメリカ発「反日史観」の“実像” 北野 充(在米日本大使館公使)
「レイプオブナンキン」映画化、慰安婦決議の背景に蠢く「反日勢力」の狙いとは
「レイプオブナンキン映画化」にされてしまっている。
●「SAPIO」2007年1月4日号
http://skygarden.shogakukan.co.jp/skygarden/owa/solrenew_magcode?sha=1&neoc=2300101107&keitai=0
知られざる反日包囲網を撃つ!/水間政憲↓第1弾 『ザ・レイプ・オブ・南京』ほか「南京大虐殺70周年映画」で蘇るアイリス・チャンの亡霊
●「WILL]2007年2月号
はっきり「上映を許すな」と主張している。
そして、前述のサニー氏のブログへはスクラムコメントが発生した。
…誰も映画を観ていないのに。映画の最終的内容も公開されていない(2007年1月17日時点)のに。
櫻井氏の発言の問題に戻ろう。櫻井氏は映画を観ていない。映画の内容に関する情報にも「レイプ・オブ・南京」の内容に沿ったかたちで制作された、と判断できるようなものはない。
櫻井氏は産経のキャンペーン(プロパガンダ)を無批判に受け入れ、そのキャンペーン(プロパガンダ)に加担している、と私は判断する。
とりあえず、「ジャーナリスト」を名乗るのは辞めたほうがいい、と思う。
なお、私の同映画への(2007年1月17日時点の)スタンスは、昨年11月と同じである。
・同映画が「レイプ・オブ・ナンキン」を下敷きにした内容である可能性を、現時点では完全に否定しない。
・しかし、同映画が「レイプ・オブ・ナンキン」を下敷きにした内容であるとは(企画書を読んだ限りでは)判断できない。
・むしろ、「南京事件を複数の視角から明らかにしていこう」という作品に仕上がっているかも、と期待を抱く。