再び「エスピー報告」の悪質トリミング問題について

既に多くの人が指摘していることですが、南京事件をめぐるアメリカの「エスピー報告」のトリミング問題について。(本ブログでは2回目)
太字の部分がトリミングされてしまいがちな部分です。

南京米大使館・作成者  米副領事 ジェームス・エスビー
       確認者  3等書記官 ジョン・エム・アリソン
       作成日付  1月15〜24日
       郵送日付  1938年2月2日

「しかしながら、ここで触れておかなければならないのは、中国兵自身も略奪とは無縁ではなかったことである。彼らは少なくともある程度まで、略奪に責任を負っている。日本軍入城の最後の数日間には、疑いもなく彼ら自身の手によって、市民と財産に対する侵犯が行われたのであった。気も狂わんばかりになった中国兵が軍服を脱ぎ棄て市民の着物に着替えようとした際には、事件もたくさん起こし、市民の服欲しさに、殺人まで行った。この時期、退却中の兵士や市民までもが、散発的な略奪を働いたのは確かなようである。姿勢府の完全な瓦解は、公共施設やサービス機能をストップさせ、国民政府および大多数の市民の退却は、市を無法行為に委ねることになり、混乱を招いたようだ。このため、残った市民には、日本軍による秩序の回復を期待する気持ちを起こさせることになった。
「しかしながら、日本軍が南京に入城するや、秩序の回復や混乱の終息どころか、たちまち恐怖政治が開始されることになった。十二月十三日夜、十四日朝には、すでに暴行が行われていた。

同報告のそのあとの記述。これらもスルーされて、「中国兵が悪かった」という部分のみ使われてしまうわけです。

日本軍の分遣隊による便衣兵狩りや処刑の他に、日本兵は二,三人ないしはそれ以上に徒党を組み、市内を傍若無人に徘徊した。これらの兵士は極悪非道な殺害、強姦、略奪をして、市を恐怖のどん底に陥れた。

しかし、われわれの聞いたところによると、日本軍指揮官より、兵士を統制下におくよう少なくとも二回の命令が出され、また、入城前、いかなる財産にも放火しないよう、厳命が出されていた。
 それにもかかわらず、大勢の兵士が市内に群がり、筆舌に尽くしがたい凶行を犯したことは事実である。

日本兵は土地の女性を捜しだしては、暴行を加えたことが報告されている。このような事件に関する報告書をここに添付している。日本軍の占領当初、こうした事件は一晩に千件からが数えられ、あるアメリカ人が数えたところ、アメリカ人所有の建物で、一夜に三〇件の強姦があったことが認められた。

出典;南京アメリカ大使館通信 エスピー報告 (「南京事件資料集・アメリカ関係資料編」 南京事件調査研究会・編訳 青木書店)



こういうトリミングが危険なのは、明らかに「なすりつけ史観」に使われるからです。
騙されている人の一例↓
http://blog.goo.ne.jp/ones_1967/e/4c39a37c98bfb144f888614003877a92

どうと言う事はない。
同胞同士が殺し合ってた訳ですね。
この資料によれば。
しかしこれでは当の中国の一般市民の方々も堪ったものでは無かったでしょう。
「安全区に入り込んだ支那兵が略奪するので取り締まって欲しい」と日本軍に「便衣兵狩り」を要請してきたのも無理のない事だったと思います。


なお、「便衣兵狩り」を要請したという史料は確認されていません。このエントリの筆者が勝手に創作したものでしょう。
コメントを入れられないから指摘するすべがないわけですが。
この他、

戦時国際法では助命する兵士は「軍服を着用し訓練され上官の指揮下にある兵士のみ」となっているからです。

これは例えば「軍服を着用せずに上官も居ない兵士はゲリラと変わらんから撃っても良い」とも取れる訳です。

などと「ハーグ陸戦条規」に書かれていない規定を勝手に創作して(http://d.hatena.ne.jp/bluefox014/20060815も参照)殺害を勝手に合法とみなしたり、南京軍事法廷の30万説の論拠(http://www.geocities.jp/yu77799/gunjihoutei.html)も確認せずに

ベイツ説(根拠のないものとされた)を7倍にも膨れ上がらせて30万人と主張したんです。

と勝手にベイツ説と30万人説を結びつけたり、どうしたらいいのでしょうね。